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掲載開始日:2018年5月22日

最終更新日:2018年5月23日

小池岳太選手スペシャルインタビュー

東京2020大会プロジェクトチーム(愛称:#ときおぱ)のメンバーが、2018年3月に開催された平昌2018パラリンピック冬季競技大会に、アルペンスキー日本代表として出場した小池岳太選手にインタビューをしました!

小池岳太1
小池岳太選手が所属するJTBコミュニケーションデザイン東京オフィスでインタビューさせていただきました。

交通事故がきっかけでパラリンピックの世界へ

Q アルペンスキーを始めたきっかけを教えてください。
A
 日本体育大学1年の秋に交通事故で障害を負い、その後半年間入院しました。そして、単位が取れないためどうしようかと悩んでいて、たまたま選択していた障害者スポーツの授業を担当する教授に相談に行ったとき、その教授が「パラリンピック種目をやってみないか」と声をかけてくださり、その一言がきっかけで、その半年後の大学2年の冬からアルペンスキーを始めました。

-その教授から「アルペンスキーを始めないか」と言われたんですか?
 そうですね。交通事故に遭うまでは、サッカーでゴールキーパーをやっていたんですけど、片手が麻痺してしまい、キーパーでJリーガーになるという夢がなくなってしまったんです。そんなときに、その教授が掛けてくださった言葉に「これだったら絶対いける」と思ったのが最初のきっかけですね。長野県出身なので、小さい頃から年間4,5回ぐらいは家族スキーに出掛けていたので、もともとスキーは得意でした。

-障害者スポーツの授業を習っていたというお話しでしたが、どうしてその授業を勉強しようと思ったのですか。
 自分が入った学科が、体育教員を目指すだけではなく、一生涯のスポーツ、障害者スポーツなど幅広くいろいろなスポーツを学べる科目があったため、選択しましたが、最初は「頑張っている人たちがいるんだな」ぐらいの印象でしたね。

-それを知っていって、小池選手もその世界に身をおこうと思ったのですか?
 最初は、まさか自分が障害者スポーツをやるとは思っていなかったので、キーパーとしての目標喪失の絶望感からなかなか切り替えられなかったんですけど、教授の一言で「この世界だったら絶対やれる」という根拠のない自信がありました。ただ実際にやり始めたらすごく難しかったです。

-その言葉は大切に心の中にしまっていますか?
 恩師の一言のおかげで、今があるのは間違いないですね。私にとって人生の大きなターニングポイントとなった言葉でした。

小池岳太スキー
Photo : Yoshihito Imaeda (FATCAT)

アルペンスキーの時速は、約130kmにもなる

Q アルペンスキーという競技の魅力を教えてください。
A
 いろいろありますが…。エンジンがないスポーツの中で、1番スピードが出せるスポーツがアルペンスキーなんです。パラの選手でも、時速120kmくらいスピードが出ます。自分は最高時速124km、トップの選手で130kmくらい出ます。

-想像がつかないです。高速道路みたいですね。
 高速道路で窓を開けて、顔を出しているような感じに近いですね。あとは、雪ってまさに自然のものなので、滑りやすい雪面もあれば、バランスがとりにくい箇所もあったりしますけれども、そんな雪とどう友達になるか、喧嘩しないでどうコントロールして加速させられるかっていうやりとりが面白くもあります。
 また、ターン中にスキー板をたわませて加速させていく感覚は、トランポリンに乗っているような感覚に近いです。左右に壁のようにトランポリンがあるとして、うまくいくと“ビヨーン”と板がたわんで跳ね返ってくるんですけど、その反発を利用して加速させる。これを固い雪、柔らかい雪とどんな雪質でもこの動きを連続して「ビヨーン、ビヨーン」と加速させられるか。そういう技術を求めていくのもアルペンスキーの醍醐味だと思っています。

-スピード感の中で、ビヨーン、ビヨーンとすることを意識していくわけですね?
 「ビヨーン、ビヨーン」と反発を生かしていくわけですが、設定された旗の通過や、先が見えない崖に飛び込むような斜面もあるので、そういった中で絶妙なタイミングをつかみながら滑っていく必要があります。ただ、うまくいったときのスピード感、加速感はたまらないですね。

-奥が深いですね。
 アルペンスキーはスポーツの中でも難しい競技だと思っています。前後左右にバランスが崩される中、遠心力が発生しますし、その状況で常にスキー板の真ん中1点にずっと位置していないといけない。全身いろいろな関節があるからその動きを調整して1本の軸を作る“やじろべえ”みたいな、軸が取れるといいですね。併せてスピードが増すごとにライン取りの選択を即座にしないといけない判断力、動体視力や冷静さと、いろいろな要素が必要です。また全身をひねる動作が多い分、怪我のリスクもすごくあります。限界を求めないと速いタイムが出ない、でもリスクがある。そこはパラでも変わらないところも魅力ですね。

味の素ナショナルトレーニングセンターでの練習

Q スピード練習というと、具体的にどういう練習をされているんですか。
A
 自分が“怖い”と感じる限界レベルをどんどん上げていく、スピード感を麻痺させていく練習です。そして、どういう姿勢だったら風の抵抗が少なくなるか、フォームを変える研究をしています。日本では、スキー場が狭くて短いので、なかなかスピード練習が出来ないんですが、ヨーロッパの氷河や南米のアンデス山脈の氷河スキー場など滑走距離を取れる地に海外遠征に行って、安全にスピードを出す練習をしたりしています。その他、オリンピックの選手たちが強化してきたような科学的な強化も最近では導入されています。具体的には2015年春以降使えるようになってきた国立スポーツ科学センター(以下:JISS)に風洞実験棟がありますが、飛行機のエンジンみたいなプロペラで時速100㎞越えの風を吹かせてもらい、そこでフォーム次第で風の流れがどう変わるかといった計測をします。パラもそういう科学的なトレーニングを取り入れられるようになってきています。

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この日も、味の素ナショナルトレーニングセンターで練習していたようです。

パラリンピックを一つのスポーツとして観てほしい

Q アルペンスキーには、いろいろな魅力があると思いますが、アルペンスキーをやっていてどのようなところに注目して観てほしいですか?
A
 リスクがあるスポーツではあるんですけど、観ている人がわくわくするようなスリル満点な滑りをしたい。そこはパラリンピックの面白いところだと思います。こんな障害なのにこんなスピードが出せるとか、片足なのにこんなに滑れるとか、車イスでこんなジャンプしちゃうのとか。そういうエンタテインメント性がパラの世界にはあると思うので、そういうところを一つのスポーツとして観て、面白いというところに着眼してもらって、報道してもらえると嬉しいですね。東京2020大会の役割はここだと個人的には思っていまして、もっとスポーツとして観てもらえるように魅力を発信していきたい。実際に観てもらう機会を増やしたいです。実際に観ると気づいてもらえると思うんですよね。

-たくさんの人に見に来てほしいですか。
 そうですね。やっぱり障害者の場合は実際に来て、装具にも注目してほしいと個人的に思います。今、選手たちが身に着けている装具はかっこいいんですよ。フルカーボンだったり、空気抵抗を極限にまで抑える設計だったり。陸上のバネのような義足とか、「この義足履いてみたい」、「どれだけ跳ぶんだろう」、「かっこいい」とか、興味を持つきっかけになると思います。

パラスポーツを体験することで、競技人口を増やす取り組みも

Q ウインタースポーツに取り組む障害者アスリート人口を増やすための取組みはありますか。
A 
平昌後に、障害者アルペンスキーチームの選手で集まって、今後どうしていくか、どうやって人材を見つけていくか、話し合っていますが、まだまだ答えが出ていません。障害者スキー連盟でもホームページを整備してチーム紹介映像を作ったり、問い合わせ窓口を分かりやすく載せたりすることで、少しずつ問合せも増えているようです。選手たち自らが参加する体験会を開いて、実際にチェアスキーに乗ってもらったりできる機会を増やすことなどを実施し始めています。

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学生たちからの質問に笑顔で答えてくれました。

パラ特有の不思議な力

Q スポーツが持つ力ってありますか?
A
 スポーツには、「人との壁がなくなる」、「リフレッシュできる」、「健康に良い」など挙げられますが、私個人的には“先が分からないことに対して、全力で取り組む”というところ。“結果が分からない”というところが魅力じゃないかなと思います。パラの場合は特に、ちょっとやそっとじゃ諦めないチャレンジ精神の塊がより強く感じられたのではと。
 今回の平昌パラは気温が高くなって雪質が悪化したのでゴールできない人が凄く増えた。そんな中でも、転倒後に斜面を登り直して再挑戦する姿など、多くの選手が諦めない姿を見せていました。その結果からか、一人ひとりの選手がゴールするだけで観客は大歓声だったんです。「お客さんたちがすごく感動してくれる、楽しんでくれる、私たちのパフォーマンスにすごく喜んでもらえている」っていうことが選手側にも伝わって嬉しく感じました。こういった部分はもしかしたらパラ特有の不思議な魅力かもしれません。

-観客の方が持つ力も大きいですか?
 もちろんです。パラリンピックのときは、選手として滑っていてもゴールからの歓声が聞こえます。今回の平昌パラリンピックは悪条件で僕自身初戦の滑降を途中棄権したんですが、最後の斜面に飛び込んで大歓声が聞こえた瞬間や、観客席の応援団の顔や日本の国旗が見えた瞬間の感動は一生忘れないです。パラはたくさんのサポートのもとに成り立つ世界。一人ではとても活動できない。その支えとなるのはやはり応援ですし、その応援にしっかりお返ししていきたいですね。

-どういう応援が1番嬉しいですか。
 会場での応援はもちろん励みになりますが、頑張れの言葉はどこからでも嬉しいです。今大会では、私が所属しているJTBコミュニケーションデザインでも、運営する全国の施設から「Go!GAK」という合言葉で、いろいろな掲示物を作って社内SNSで投稿してくれたり、社内でのパブリックビューイングを毎レース開催してくれたりしました。これは地元長野もそうですし、在住の北区も全力で応援くださいました。心から感謝の気持ちでいっぱいです。

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平昌パラリンピックから帰国した後には、北区で報告会をしてくださいました。

ボランティアの方々から思いやりを感じた

Q その他に平昌パラリンピックを思い返して、印象深いエピソードはありますか。
A
 食事がすごく美味しかったです。日本に近いお米もあり、助かりました。韓国の方は今回、大会当初から最後まですごく優しくて、ホスピタリティ精神が高く、選手たちへの愛を感じたことが印象的でした。ボランティアスタッフの皆さんが、それぞれの国の人が来たらそれぞれの言葉で話しかけてて。片言でも学んでくれることは嬉しいですよね。成績が出せなくてうなだれて食堂に行っても、「今日はどうでした?頑張ってくださいね。」みたいなことを言ってくれたり、ピンバッジの交換など、ボランティアの人たちの温かさに気持ちが和みました。

-食堂には、いくつもの国の料理が用意されているのですか?
 そうです。アジアコーナー、北米向けではハンバーガー、イタリア系でピザ、フランス系でフランスパンなどなど。ビュッフェ形式で24時間営業でした。

-日本食の質、味はどうでしたか?
 今回、選手村には日本食はなくて、韓国料理のプルコギをずっと食べていました。ナムル、ホウレン草、ニンジン、玉ねぎとか、その他フルーツもたくさん種類がありました。ただやっぱり日本食が恋しくなることもあって、日本食は選手村の外に設置されたハイパフォーマンス・サポートセンターで食べていました。
 今回、設置されたハイパフォーマンス・サポートセンターは、ジム、リハビリ施設、お風呂、食堂と非常に充実した施設でした。過去、ソチとかバンクーバー、トリノ大会では、日本米がないなどと食事面で厳しい環境もありましたが、今回は普段日本にいるのとさほど変わらない状況で大会に臨めました。

-いよいよ東京2020大会のボランティア募集が始まりますが、選手にとってどういうボランティアが嬉しいですか?
 ボランティアとは少し外れてしまうかもしれませんが、パラの選手は、日常生活においては結構何でもできることも多く、たとえば障害者アルペンスキーチームの車イスの選手は、エスカレーターにも乗れるし、段差のある電車の乗り降りも、難なくできます。そういった面は、自分で工夫してできますが、どうしても困ったときには手を差し伸べていただけるといいなと個人的には思います。日本は、ホスピタリティ精神あふれる国だから至れり尽くせりのサービスをいただくこともありますが、少し過剰に感じるケースも稀にあります。私たち障害者側も、やってもらって当然という意識は捨てなければいけない。「これはできる」、「これは助けが必要です」とコミュニケーションをもっと取る必要があると思いますし、私たちもできる限り“自分でやる意識”が必要だと思います。

-車イスでエスカレーターってどうやって乗るんですか?
 前輪を上げつつ進んで、段差にタイヤをはめたら、あとは手すりに摑まって支えるだけ。パラの選手だからかもしれないけど、階段2~3段であればポン、ポンと降りてしまうんですよ。

子どもたちに向けたメッセージ

Q 夢を叶えていくためにどういうことをすればいいか、北区の子どもたちにメッセージをお願いします。
A
 僕の経験で、そのときの価値観や環境によって、小さい頃から夢が何回も変わっています。夢は何回変わってもいいから、大切なことはその時々の目標、課題に向けて自分からがむしゃらに行動することかなと思います。頑張り続けることで、必ず周りの人も手を差し伸べようとしてくれて、輪が広がっていくので、夢の実現が着実に近づく。人生にはいろいろな壁があると思うんですが、簡単にはあきらめないでほしいんです。例えば僕自身、スキーの練習環境がないときは、民宿で掃除など手伝いつつ、衣食住を確保してから練習していました。また、今の生活では爪切りを切るときに、健常の右手がうまく切れない。考えた挙句、爪切りを床に置いて足で踏みながら切っています。靴ヒモも今は10秒ぐらいで片手で結べますよ。工夫次第でいろんなことができるっていうのが実体験。そういう経験をしている自分だからこそ、伝えられる部分もあるんじゃないかと思っています。

-北区に住んでいるからこそ感じる点はありますか?
 北区は東京都障害者総合スポーツセンターがあったり、都営三田線、都営バスは障害者は無料ですから利用することが多いためか、街中で体の不自由な人を見かける機会も多いと思います。なので、そういった“個性”や、“違い”に慣れたり思いやりが生まれやすい区でもあるのかなって思っています。

-北区でおススメのスポットはありますか?
 東京都障害者総合スポーツセンターはテニスコート、陸上トラック、体育館もあるし、1階のレストランもあることで普通に皆さん利用するなどスポーツがやりやすいですよね。今は、自転車の練習で荒川沿いを走りますが、解放感は素晴らしいですね。JISS・味の素ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)の敷地もジョギングスポットとして良いですよね。たくさんの選手が走っていますが、競歩の選手にすごいスピードで抜かれる体験も面白いのではと思います。

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小池岳太選手の手形も区立稲付西山公園にあるモニュメントに追加される予定です。

プライベートなこともお伺いしました

Q 好きな食べ物はなんですか?
A
 納豆です。梅とかオクラをトッピングしたいですね。

Q 尊敬する人はいますか?
A
 10年間お世話になったトレーナーの先生かな。スパルタで教わりましたし、本当によくぶつかりましたけど、自分の指標ですね。

Q 自分を動物に例えるとなんですか?
A
 おっとりとした見た目?からキリンだろうなとは思います。動物ではないけど、教育実習に行ったときに子どもたちからSESAM STREET®のバートっていうキャラクターに似てるって言われたことも(笑)。

Q 座右の銘はありますか?
A
 ないなと思ったんですけど…。「自分の可能性を信じる」という言葉を伝えたいなと思って、講演会のタイトルにしています。自分の置かれた状況の中でできることをする、試合前にもいつも考えている点ですし、前向きで力が湧く考えかなと思います。

Q 北区でよく行くスポットはどこですか?
A
 練習があるため、JISS・NTCがやはり1番通っています。

Q 寒さには強いんですか?
A
 寒さ、暑さの極端な部分は強いと思います。サッカーのゴールキーパーで、厚着して炎天下でやっても大丈夫でしたし、アルペンスキーの-20℃の中でもスピードを出す練習も平気でやれていましたので両極端かな。8月生まれですし、新聞配達を小学校4年から19歳まで雨の日も雪の日もやっていたので、そこら辺は大丈夫かなと。ただ、怪我だけですね。スキー競技で、リハビリに1年くらいかかってしまう大ケガが、12年の競技歴で3回ぐらいあったので、今後できるかぎり怪我をしないように、これまで以上に普段からの体のケア、食事に気を付けたり、余裕を持って行動していきたいですね。

これからの夢は、パラリンピックで世界一になること

Q これからの目標や夢はありますか?
A
 まず選手としては東京2020大会出場を自転車競技で目指しているので、必ずメダルに絡む争いをする。これまで、パラリンピックで世界一になりたいという思いでやってきました。東京2020までは、わずか2年しかないですけど、可能性はあると思うんです。
 パラリンピックは、私を成長させてくれているものですし、自分にとって夢の舞台、かけがえのない価値のある舞台です。そこで1番(金メダル)をとって、これまでにサポートしてくださった方々にも恩返しをしたいです。

小池岳太自転車
Photo : Yoshihito Imaeda (FATCAT)

 ほかにも、特に子供たちに向けて、自分がこれまで経験してきたことも交えながら、「自分の可能性を信じること」をもっと伝えたいです。JTBコミュニケーションデザインでは全国の施設運営もしていて、北区の「北とぴあ」の運営にも携わっていますが、そういう場もお借りしながら、パラスポーツの体験会等を通じた普及活動も実施していきたいですね。実は、JTBコミュニケーションデザインに転職したのも、競技活動だけじゃなくて業務として社会に役立ちたいという思いで入社した経緯があるので、自分にできることをもっと見つけていきたいです。JTBグループとしてもスポーツに力を入れていて、オリパラのサポートはもちろん、いろいろな競技団体のサポートしていたり、全国各地でマラソンなどのスポーツイベントを開催しています。JTBグループの社員として、社会に貢献できる場もたくさんあると思うので、色々な場面でこれまでの経験や思いを伝えていきたいですね。

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東京2020パラリンピックに向けて、頑張ってください!!

 インタビュアー:平成30年度”#ときおぱ”メンバー 伊藤梨妃、島仲菜摘、鈴木晴菜

※インタビューは、平成30年4月下旬に行いました。

 


 

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