子どもの遊び＜春＞

　春になれば、飛鳥山（あすかやま）、名主（なぬし）の滝など遊ぶ場所はいくらでもありました。星美（せいび）学園のところには工兵隊（こうへいたい）の兵舎（へいしゃ）があり、桜の花ざかりには一般に「軍旗（ぐんき）祭り」といって特定の日を開放して、見せてくれたのです。それは見事な桜で、町の人々がぞろぞろ見物に出かけました。子どもたちも一緒（いっしょ）に行って見るのが楽しみでした。
　 また、工兵隊あり被服廠(ひふくしょう）ありといった軍隊（ぐんたい）的な町でしたから、子どもの遊びといえば、兵隊ごっこが盛んでした。しかし、竹の棒をかついで歩くという程度（ていど）で平和なものでした。
　4月の岩淵の正光寺の縁日（えんにち）は植木市でした。子どもたちは袋に米をつめて持って行くと御膳（ごぜん）が出てごちそうが食べられるというので、心待ちにしていました。3月と5月の桃の節句（せっく）と端午（たんご）の節句は月おくれでやる家が多く、1か月も飾（かざ）っておく家がありました。